野田佳彦首相は4日午後、環太平洋パートナーシップ協定の交渉参加について「最終
的に私の政治判断が必要になる。その時期が来れば判断したい」との考えを明らかに
した。カンヌ市内で同行記者団に語った。首相は「議論をどこかで終結した暁に、政
府と党の三役会議で決定する」と、政府・与党内の意見集約への決意を表明。また「
離脱うんぬんではなく、あくまで国益を実現するために全力を尽くすのが基本的な姿
勢だ」として、「交渉参加後も離脱可能」とする党内の一部の議論に否定的な見方を
示した。首相は主要20カ国・地域首脳会議の全日程を終え、同日夜にカンヌを出発。
日本時間5日午後に帰国する。

 

政治判断、この言葉の意味を野田首相が勘違いしていないことを祈るばかりだ。トッ
プダウンで決められるほど野田首相の政治基盤は盤石ではないし、何よりもTPPに
反対する勢力を党内に抱えている。意見をまとめられず、執行部が立ち往生しかねな
い中で、野田首相がリーダーシップを発揮して一気に乗り切るシナリオなのだろうか。
一方でTPPに反対する有識者らでつくる団体主催の街頭演説会が東京・有楽町で行
われ、民主党から山田正彦前農相や原口一博総務相ら国会議員約20人が参加し気
勢を上げた。TPP参加ありきに傾く財界の後押しを受けるものの、民主党の支持母
体である連合は反対に回る傘下の組合があったりと、足並みは揃っていない。多くの
反対派が気にしているのは、今から交渉に参加しても我が国がルール作りに加われな
い可能性があるということだろう。そもそも交渉のテーブルにつくには、参加国の了
解も必要なのだ。来夏までの合意を目指している中で、来春に交渉参加が許されても
大方は決まった後で、それを覆すのは非常に難しいのだ。それでも、早期の交渉参加
野田首相が謳うのだろうか。