野田首相は11日の記者会見で、環太平洋経済連携協定交渉参加に向けた決意を表
明する一方で、党内外に根強い慎重論への配慮も示した。首相は交渉参加の意義を、
「貿易、投資立国である日本がアジア太平洋地域において、よりフロンティアを開
拓していくところに意義がある」と唱えた。日本は長期の景気低迷が続き、経団連
などは少子高齢化で伸び悩む内需に代わって外需に活路を求めるTPPが必要だと
している。首相の言葉には、「TPP参加は日本経済復活のラストチャンス」とい
う思いもにじんだ。一方で交渉に臨む決意として、「守るところは守り、勝ち取る
ものは勝ち取るという、国益を最大限に実現するために全力を尽くす」と強調した。

 

TPPの交渉参加を表明した野田首相。出口の見えない日本経済を浮上させるため
にTPPへの参加が必要とは言うものの、どれだけのメリットがあるかは相変わら
ず見えてこない。TPP参加で我が国のGDPが2.7兆円押し上げられるとの試
算も正直なところインパクトが小さい。もともと日本経済の輸出依存度は16%に
すぎず、貿易がGDPに占める比率は世界170国中で164番目である。新興国
が成長する中で、我が国が得意としてきた製造業もいつまでも安泰とは限らない。
そしてTPPに最も反対している農業団体も、今回の交渉参加の表明には危機感を
憶えているだろう。野田首相は母の実家が農家であることにも触れ、「母の背中の
カゴに揺られながら、のどかな農村で幼い日々を過ごした光景と土のにおいが私の
記憶の原点にある。世界に誇る医療制度、伝統文化、美しい農村は断固として守り
抜く」と力強く語ったが、いまいち心に響かないのは何故だろう。